もう一昔くらいまえなのだが、当時勤めていた消費者金融の事務所に乗り込んできた奥様がいた。 

電話だけでも融資する(フェイク有)会社だったのだが、何かのついでの時に直接返済に寄るお客様もいたので 
応対に出たのが様子がおかしすぎた。 

真っ先に「支店長呼んで下さい!」と入って来た奥様はフェミニンなスーツをきちんと身につけ、 
次いで入って来た人物は中年のこれまたピシッとスーツを着込んだ男性。ここまでなら旦那同伴で 
一括返済に来たのかもと思えたのだが、その次に上目遣いでおどおどしたおばさんが入って来たので正直「?」だった。 
「支店長に何か…?」と来訪理由を軽く尋ねたところ、奥様が男性の後ろに隠れていたおばさんを指差し、 
「この人が私の名前で申し込んだ借金の件です!」と言い放って事務所の空気が固まった。 

慌てて案内した応接コーナーから話が洩れ聞こえてきたところによると、おばさんはお決まりの多重債務者で 
もうドコにも新規契約してもらえない、既約済みの会社に借りようとしても、ちょっと返済してはすぐに 
限度額一杯まで借り直す状態だったので数万円借りられるかどうかのカツカツ状態。 

そのため、それまで御近所付き合いのあった奥様のお宅にお邪魔した時にそこの家人の目を盗んで 
契約するための保険証を盗み出したのだとか。それをコピーして本物はこっそり返却、 
奥様の家の電話を使ってあちこちに融資の申し込みをして借金を重ねていたのだという。 

そこまで話を聞いた支店長が「急いで調べて!」と言ってきたので大慌てでデータを漁ってみれば、 
おばさん名義の融資口座もしっかりあって、奥様名義のそれもあった。 
本人名義の口座は延滞常習者で融資不可認定がしてあったのだが、奥様名義の方は毎月きちんと 
振込がしてあった。 

督促の電話が行ったら即バレする! と他人名義の口座優先で振込をしていたまでは良かったのだが、 
実は優良会員にはこちらからご機嫌伺いと融資の勧誘電話をするw 
それで奥様の所にDMが行ってバレたらしい。

同伴の男性は実は弁護士で、法的に処理するべく一緒に会社周りをしているとかで、 
奥様名義の融資はおばさんの融資として処理し、奥様名義の口座は削除してくれという話だった。 
もう弁護士まで出てきているし、おばさんも家族にバレてしまっているだろうし、 
大事になりまくっているし、子供は確かけっこう大きかったので軽蔑されてるだろうし、 
何よりお帰りの際に奥様に 
「一体あと何社に借金してるのよ! あと何時間かかると思ってるの!」 
と罵倒されながらビクビクと後ろについていったおばさんがちょっぴしかわいそうになった。 
泥棒して詐欺かましてって自業自得だけど、市中引き回しの刑状態でここまで 
叩きのめされてるのもすげえキツいと思った。 

刑事か民事か、どうオチがついたかはさすがにこちらの方には沙汰が聞こえてこなかったので 
尻切れっぽくてスマソ。 
でもこの引き回し道中だけでも骨身に沁みたんじゃないかなーと。