昔、全部で10人足らずの零細企業に勤めていたが、 
そこの同僚(当時20代半ばのイケメン)が、以前から付き合っている彼女との結婚を決めた。 
で、勝手に結婚を決めたことが社長としてはとにかく気に入らない。 
社長は女性なんだが、社員を自分の息子や娘みたいに思ってるフシがあってなのに自分に相談がなかったとか、夜遅くまで仕事させたり飲み食いにつき合わせたりが出来なくなるとか、まあ理由はいくつかあったよう。 
その辺ははっきりとはわからないが、この結婚に対して不機嫌であることは事実だった。 


で、社長以下社員全てに招待状が来た。しかし、社長は出席の返信を出さなかったらしい。 
「だって出席するに決まってるでしょ。」とのことで。 
それもなんだかなーとは思ったんだが、いよいよ式の日が来た。 
新婦がクリスチャンで、立派な教会での厳粛な式だった。 
しかし、社長とその側近は来なかった。 
披露宴会場に移動して、もうすぐ披露宴が始まるという頃に社長たちが到着。 
社長いわく「勝手に結婚なんて決めるから式には行ってやらなかった、ここの会場は自分が紹介したところだから、来たけど。」とのこと。 
ご祝儀に関しては、式前日に社長が社員全員に向かって「私がこの間お祝いでたくさんお金渡してるんだから、明日のご祝儀は皆1万でいいから。」と社長命令。 
若い社員は助かったけど、夫婦で出席のいい年した上司なんかどうしたんだろう。 

で、その社長が、なんたって新郎勤務先の社長ですから、スピーチ。 
結婚式の前に、教会で式を挙げるにあたって新郎はクリスチャンではないから、何回か神父さんの話を聞きに行かなければならないことがあった。 
そうすると、世間の常識的な終業時刻には会社を出る必要がある。 
しかし、なんせ深夜まで会社にいるか社長の飲み食いに付き合うかがデフォルトの会社。 
だもんで、夕方には会社を出て教会に向かう新郎についての軽いイヤミがまずひとつ。 
そして、社長にお伺いを立てずに結婚を決めたことを遠まわしに遠まわしに非難。 
何にも知らない人はわからないけど、聞く人が聞いたら、特に新郎自身は思いっきりイヤミと非難が炸裂していることに気が付くはずの内容。 
新郎のお父様もだんだん内容に気が付いて、仏頂面になっていったのが遠目からでもよく見えた。 

式も立派で良いものだったし、お料理もおいしかったし、新郎新婦は美男美女だし、端から見たら何の落ち度もない良い結婚式だったけど、なんというか、あれほど居心地の悪さを感じた結婚式はない。